Sean Perkins & Yoshiaki Irobe
デザイントークセッション
Event Date : 2019.12.16
![Sean Perkins & Yoshiaki Irobe デザイントークセッション](https://www.ndc.co.jp/assets/uploads/2020/03/d536ac467a7c2c93a4e8b6c94357d398.jpg)
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世界初の生協「co-op」やイギリス各地の美術館を運営する「TATE」などのブランディングを手掛ける、〈North〉社の方たちがロンドンから来社。設立者のショーン・パーキンス氏と、当社アートディレクター色部義昭がデザインの考え方について話し合いました。色部が手掛けた仕事の紹介に続き、〈North〉社の仕事や課題解決への向かい方をご報告します。
サインデザインは空間にインターフェースをつける仕事———色部
サインデザインは空間にインターフェースをつける仕事
———色部
———色部
色部(NDC)
市原湖畔美術館は、湖近くの美術館なので、水面のきらきらとした動きや気持ちよさをヴィジュアルで表現しています。湖の表情には見飽きない心地よさがあり、その記憶とミュージアムの記憶が重なるようにと考えました。封筒などには広い面にロゴを配置することで、周りに水面が広がっているような効果を狙っています。他にもさまざまなミュージアムグッズをこのパターンで制作しましたが、メモパッドは、紙をめくるとモーショングラフィックスのようにサインが動き出します。
空間デザインも手掛けました。建物の構造が複雑なので、サインでわかりやすく補完する必要があり、点線を繋いで導いていく手法をとりました。回り込んだ壁に直接サインをペインティングしたことで視覚的効果も生まれています。このデザインをするときにインスピレーションを受けたのは、道路のサインです。ラインがなくなると空間がとりとめなくなりますが、ラインが入ることで空間と人との関係が明確になります。その原理をサインに置き換えました。
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このように点線を使うことで、わかりやすく来訪者を導き、同時に個性を作り出しました。この仕事をしながら思ったのは、サインデザインはプロダクトにインターフェースを付けるというより、空間に対してインターフェースを与えることなのだと実感しました。考え方を表すと、空間の中に四角い粒子をばらまいて個性を作っていく感じです。
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Osaka MetroのVIは、街のプライドを表現———色部
Osaka MetroのVIは、街のプライドを表現
———色部
———色部
色部(NDC)
大阪の地下鉄は、もともと市が運営していましたが、民営化されるタイミングでVIとネーミングをつくることになりました。名前は、観光客にもひと目でわかるように、個性的というよりわかりやすさを大切にしています。名前が平易なのでヴィジュアルで個性をつくろうと、モーショングラフィックスを取り入れたヴィジュアルアイデンティティを提案しました。大阪の人たちは、自分たちの街にプライドを持っているので、大阪的な要素が入っていないと受け入れてもらえないと考え、大阪の「O」を内包している「M」にしました。
アイデンティティを作る上で世界の鉄道や地下鉄を調べましたが、アイデンティティの形や色だけでなく路線図で使われている色も調べました。UNDERGROUNDが素晴らしいのはスマホのグーグルマップの中の2mmぐらいのサイズでもUNDERGROUNDだとわかることです。またモスクワの「M」は建物の尖った屋根とリンクしています。Osaka Metroの場合は、映像を見るスペースがあるので動くVIを作りました。またさまざまな国の鉄道のVIと路線図との色の関係を分析して、このカラーリングになりました。大都市大阪の街を小さなロゴがアップデートしていくこと、そういう点がVIデザインの醍醐味ではないかと思います。
課題に向かうとき最も重要なのはリサーチ———ショーン
課題に向かうとき最も重要なのはリサーチ
———ショーン
———ショーン
ショーン
私たちの会社にはパートナーが3人いて、オフィスはロンドンにあります。15人のデザイナーが働いていて、創立から25年経ちました。専門はブランディングとアイデンティティ構築です。グラフィックデザインだけでなく、プロダクト、建築、展示、政府関係の仕事など、世界中のクライアントと仕事をしています。仕事の仕方ですが、はっきり確立していて課題への向かい方は常に明快です。第一にリサーチを大事にします。見えるところもそれ以外のこともいろいろ調べて分析し、そこから最終的にデザインすなわち「魔法」が生まれます。
最初に、2015年にリブランディングしたco-opの仕事についてお話ししたいと思います。この会社は1844年にできた歴史ある会社で、世界で最初にco-op(生協)を作ったところです。所有しているのは会社ではなくパブリックです。人による人のためのコミュニティであり、お金をco-opで使えば地域に還元され、お客さんがco-opを経営する地域還元という考え方です。業態はスーパーマーケットが中心ですが、葬儀社などにも営業を拡大し、近年経営が上手くいかなくなっていました。そこでリブランディングするにあたり、私たちは、まず、もともとco-opがどんなグラフィックを使用してきたのかを調べましたが、それはとてもタイムレスでいいデザインでした。そこで1968年のロゴをきれいに整理して2015年のロゴを提案することにしました。歴史ある過去と未来を関連付け、その上でより明るい色を使い、より明るい店舗に変えました。ロゴを使ったグラフィックや多様なアプリケーションを展開し、内装、サイン、ショッピングバッグ、デジタル、すべてをリブランディングしましたが、その結果、従業員も活性化しました。
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Sean Perkins |ショーン・パーキンス
Founding Partner at branding design studio North, London. |ロンドンのブランディングデザインスタジオ North 共同創立者
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若い人たちを引きつけるTATE ———ショーン
若い人たちを引きつけるTATE
———ショーン
———ショーン
ショーン
イギリス各地の美術館を運営するTATEグループのリブランディング目的は、新しい戦略で若い人を惹きつけたいというものでした。TATEには4つのブランチがありますが、それらは人と人が出会うコモンスペースであること・議論ができるスペースであること・アートを通して人々を活発にさせることを目的としています。しかし現実の状況は、ポスターは弱く、全体にノーコントロールでいろいろな問題を抱えていました。でも問題があるというのは、見方を変えればいろいろな解決を提示できるということでもあります。私たちは新しいロゴを作り、ユニフォーム、パッケージに展開し、空間に配置しました。1500年代以降の絵画を中心に展示するTATE Britainにも、近現代美術を展示するTATE Modernにも、またTATEの本屋にも使えるようにしています。ローンチのための広告をはじめ、メンバーシップ募集のポスター、絵画展のポスターなど、TATEグループのさまざまなキャンペーンを手掛けています。
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さまざまな業態のブランディング、それぞれの着眼点———ショーン
さまざまな業態のブランディング、それぞれの着眼点
———ショーン
———ショーン
ショーン
Southbank Centerというのは、展覧会、劇、コンサートなどを開催する複合施設です。TATEと似ているし、場所も隣り合っているのですが、今までアイデンティティが機能していなかったので、TATEとの差別化を図るためにサウスバンクセンターを文化の中心地と意識づけることを提案しました。ここはとても大きい施設で3つの建物があり、それらを黄色でまとめています。ヴィジュアルアイデンティティは、雑誌のタイトルのようにしています。そうすることで、毎月サウスバンクセンターで何があるかを伝えられます。ここの建築はブルータリズムという様式で有名ですが、その特徴からフォントをシェリフにしました。矢印の少し尖っているところは、昔のロゴから引用しています。
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他にもいくつかご紹介します。次は、SCIENCE MUSEUMです。各地にあるのですが上手くいっていないところもあったので、成功したロンドンのVIを使って他のものと共に展開しました。私たちの会社のデザイナーすべてがこれらの展開に携わっています。色を使ったモーションロゴは、惑星が自転したりそのスピードだったりを示しています。
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first direct は電話で銀行口座を開設できる銀行業でした。その後、インターネット銀行になり、次にモバイルバンキングサービスになりました。コンセプトはクルマやファッションブランドと近いもので、必ずロゴが中心で、色は黒と白のわかりやすいコントラストにしています。
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また、私たちはファッションブランドも手掛けていて、RINASCENTEはイタリアのデパートのファッションブランドです。デパートの支店のある都市をもとに、ミラノはミラノらしく、フィレンツェはフィレンツェらしくブランディングしているので、お客さまはその都市らしいショッピングバッグを持ち帰ることができます。
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色部(NDC)
Northの社員数は多くはありませんが、co-opなど膨大に広がっていくプロジェクトをガイドラインでどのようにコントロールしているのですか。
ショーン
ガイドラインはそもそも統一を生み出すものですが、フレキシブルで使いやすくあるべきだと思います。私たちの手を離れれば、別の人が違うアイデアをブランディングに取り入れようとすることもあります。そんな統一感を出すために重要なのは原研哉さんのようなクリエイティブディレクターがいることです。また同時に長年そのプロジェクトと付き合っていくことも大事です。
色部(NDC)
Northの仕事は知的で計画がよく練られていると思いますが、Northらしさ、考え方はどうやって共有していますか。
ショーン
私の他に20年前から二人のパートナーがいます。私たちがデザイナーを採用するときは、新しいクオリティと、新しいものを呼び込んでくれるかどうかを見ます。問題解決意欲がある人を特に重視します。なぜこうすべきかという、デザインに対する明確な意図を持った人です。見た目にいいものを作るというデザイナーは、Northには一人もいないです。
アンズヤー(NDC)
サウスバンクのプロジェクトは、なぜ黄色なのですか。
ショーン
いくつかの異なる色を塗って実験しました。 黄色は、ブルータリズムの冷たい印象の建築に対して、遠くから明るく、楽観的に信号を送るのに適した1つの色で、実用的かつ機能的でした。建築自体は文化財として保護されていますが、文化的な目的なら塗ってもいいということで、アーティストに塗ってもらいました。
ノース
市原湖畔美術館はデザイン以外で、コラボした人がいますか。
色部(NDC)
市原湖畔美術館の仕事は建築家と共に話し合って進めました。この美術館はリノベーションだったので建築家といろいろ作戦を立て、壁が凸凹しているというネガティブな要素に対しても、むしろ楽しみながら取り組みました。
ショーン
Osaka MetroのVIの表記は、英語だけですがそれはなぜですか。
色部(NDC)
普通はバイリンガルにしますが、二つの言語が表記されると読みづらくわかりやすさが低下してしまいます。英語だけというのは一つのチャレンジだったのですが、多くの人が理解できると考えています。
以上