MEETING
瀬島 卓也
株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン
Event Date : 2014.06.23
先進のテクノロジーや独自の発想で、デザインの可能性を広げる人たちがいます。
さまざまな領域を横断し、これからのデザインをともに考える対話の場「NDC LUNCH MEETING」。
今回は、元『広告批評』編集者で、現在はWebのプロダクションでプランナーとして
メディアを問わない企画づくりを実践されている瀬島卓也さんをお迎えしました。
Webだけにとどまらない仕事が増えています―― 瀬島
Webだけにとどまらない仕事が
増えています
―― 瀬島
増えています
―― 瀬島
瀬島
以前、「映画『けいおん!』×アイスの実 放課後アイスタイムきゃんぺーん!」という企画を提案したことがありました。このときは、キャラクターを使って「アイスの実」を売りたい、という相談を受けていまして。
「アイスの実」を売るには、購買力の高いファンがいるキャラクターを使って、ファンの人たちが楽しめるようにすればいいのでは? と考えました。そのためこのキャンペーンでは、全ボイス録りおろしの日替わりカレンダーサイトや声優さんのサイン入りグッズなど、ファンの人たちのためのコンテンツを用意することに力を注いでいます。重要なのはコンテンツですから、Webサイト自体はシンプルなものにしました。
また企画時には、声優さんのキャスティングに予算をかけるなど、効率的な予算配分にも気をつけています。この企画の場合、キャンペーン用に新しく声優さんの声を録ることで、本気度が伝わりますし。
たとえばこの企画のように、Webサイトだけにとどまらない仕事が増えてきています。そういった状況があるなかで、ワン・トゥー・テン・デザインでは売り上げの5%を自社開発にあてる仕組みをつくり、新たなトライアルにも挑戦しています。ちょうど先日公開した、Unreal Engine 4という新しいゲームエンジンを用いたインスタレーションコンテンツの制作などがそうですね。
電話口で伝わる企画が、いい企画だと教わりました―― 瀬島
電話口で伝わる企画が、
いい企画だと教わりました
―― 瀬島
いい企画だと教わりました
―― 瀬島
鍋田NDC
現在はWebプロダクションでプランナーとしてご活躍中の瀬島さん。もともとは編集の仕事をされていたと伺いました。
瀬島
はい。今の会社に入る前は、『広告批評』で雑誌編集者として活動していました。インタビューなどで実際に広告クリエイターの方たちとお会いする機会もあったのですが、企画についてよく言われていたことがあって。それは、「電話口でササッと説明できるレベルの企画じゃないとだめだ」ということです。企画の考え方をはじめ、編集者のときに学んだことはプランナーとして仕事をする今でも大事にしています。
瀬島 卓也 Sejima Takuya
プランナー。株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン所属。1986年生まれ、東京都出身。高校卒業後の2004年から、雑誌『広告批評』の編集に携わる。30年間続いた『広告批評』の休刊にともない、2011年からは株式会社ワン・トゥー・テン・デザインに所属。現在はプランナー、ディレクターとして、Webの世界に軸足を置きながらも、メディアを問わない企画を手がけている。主な仕事に、江崎グリコ株式会社「映画『けいおん!』×アイスの実 放課後アイスタイムきゃんぺーん!」、協和発酵キリン株式会社「Web漫画『新抗体物語』」、ピザハット「Pizza Hut × ラブライブ! 『NEXT PROJECT 応援キャンペーン』from音ノ木坂店」など。
有馬NDC
瀬島さんとは「アルドノア・ゼロ」というアニメの仕事でご一緒していますが、データの素早い整理整頓や、デザイナーのために資料をリライトしてくださるところなど、編集者時代に培ったものを垣間見ることが多々あります。
アニメーション作品
「アルドノア・ゼロ」
グラフィック
見出しになると話題になる あとは自然に広まっていく―― 瀬島
見出しになると話題になる
あとは自然に広まっていく
―― 瀬島
あとは自然に広まっていく
―― 瀬島
瀬島
「けいおん!」を起用したキャンペーンがきっかけで、「抗体薬品についての啓蒙マンガ」を多くの人に読んでもらいたい、という話が製薬会社(協和発酵キリン株式会社)からありました。Webを用いたキャンペーンで抗体医薬品をテーマにしたマンガを読ませたいのですが、薬事法などのルールがあるため、セリフの専門用語を変えたりすることはできなくて。
三好NDC
難しい言葉を言い換えられないという制限のなかで、マンガに興味を持ってもらうには何か強いきっかけが必要そうです。
瀬島
実はまた、声優さんにお願いしました(笑)。マンガの主要キャラクターは3人なのですが、Webサイト上でキャラクターの声を選んで楽しめるよう、6人の声優さんを集めました。これは雑誌の編集をしていたときの感覚なのですが、見出しにしやすい企画だと思ったんです。「協和発酵キリンが、人気声優6人を起用したマンガを発表!」という感じで。
見出しになる企画って、取り上げられやすいんですよ。口コミやWebメディアで話題になることを狙っていたので、これならいける、と。予算的にもほとんど広告費を使わなくてすみました。話題になれば、自然と広まっていくんですよね。
自分のキャラクターを相手に知ってもらえると、はずれがない―― 瀬島
自分のキャラクターを
相手に知ってもらえると、
はずれがない
―― 瀬島
相手に知ってもらえると、
はずれがない
―― 瀬島
瀬島
アニメやマンガを使った事例の話が多いですが、同じ分野の仕事をやっていくうちに「瀬島くんはこういうことができるんだ」と周りの人たちが思ってくれるんですよね。僕自身、アニメは好きですし。 自分のキャラクターを最大限に生かせるところを相手に知っておいてもらえると、はずれがない気がします。
菅原NDC
NDCにはデザインが好きなデザイナーが多いのですが、たとえばアニメなど、仕事とは別軸で何か好きなものを強く持っていると、そこから新しい広がりやつながりが生まれそうですよね。
瀬島
はい。たとえば僕は、打ち合わせの場でも自分の好きなものについて雑談するようにしています。これは相手の近況伺いも兼ねていて、思えば、編集者の頃からしていることですね。
今までのご経験が、すべてつながった事例―― 鍋田NDC
今までのご経験が、
すべてつながった事例
―― 鍋田NDC
すべてつながった事例
―― 鍋田NDC
瀬島
「自分の好きなもの」という話と関連する事例があります。あるとき、キャラクターを使ってピザを売りたいという相談がピザハットからありまして。「けいおん!」のときと同じ考え方で、勢いのあるコンテンツを使おうと思い「ラブライブ!」というアニメのキャラクターを起用しました。もともと自分の好きなアニメだったということもあって(笑)。でも、自分の好きなものをまぜると、愛情や理解を持って案件に接することができます。
企画内容を具体的に説明すると、ちょうどアニメの舞台である神田のあたりに、ピザハットの店舗があったんですよね。それを利用して、アニメの主人公たちが通う「音ノ木坂学院」という学校になぞらえたピザハットの特別店舗を作りました。「神田店」ならぬ「音ノ木坂店」です。
これも、雑誌なら見出しになると思いました。「ピザハットと『ラブライブ!』がコラボ。音ノ木坂店オープン!」という企画であれば、話題になって広まっていくはずだと。インフルエンサーとなる「音ノ木坂店」に予算をかけることが重要だと考えていたので、やはりWebサイト自体はシンプルにしています。
鍋田NDC
ご自分のキャラクターを周囲に伝える努力をされているからこそ来た仕事で、見出しの考え方や話題づくりの巧みさ、効果的な予算配分など、今までのご経験がすべてつながった事例のように思います。
思い切って質問します 苦労した企画はありますか?―― 町野 明徳
思い切って質問します
苦労した企画はありますか?
―― 町野 明徳
苦労した企画はありますか?
―― 町野 明徳
町野
苦労した企画や思い通りにいかなかったことなど、あれば教えていただきたいのですが…。
瀬島
僕の場合、自分が楽しめたときに、思い通りに近い形で企画が進む気がします。そういう意味では、今の会社に入ったばかりの頃は企画を楽しむということができていなかったかもしれませんね。今も、完全にできているとは言いませんが。
大黒NDC
キャラクターを提案するときはどうですか? キャラクターの個性と、企業の文化や世界観とのバランス、距離感が難しそうです。
瀬島
常に、企業の世界観やブランドに合うキャラクターを吟味して起用するようにしています。たとえば「ラブライブ!」の主人公たちは女子高生ですが、ピザと女子高生ってどちらもポップな雰囲気があると思いまして。 キャラクターと企業の距離感よりも、そのキャラクターを使うにあたっての交渉や準備のほうが大変かもしれません。アニメやマンガなどは、関わっている人の数が多いので。
デザインとエンジニアリング、今の時代に適した関係とは?―― 三好NDC
デザインとエンジニアリング、
今の時代に適した関係とは?
―― 三好NDC
今の時代に適した関係とは?
―― 三好NDC
三好NDC
このランチミーティングでは毎回、デザインとエンジニアリングの関係についてゲストの方にお聞きしています。新しい技術が次々と出てくるなかで、デザインはどうあるべきなのでしょうか?
瀬島
いちばん大事なのは、「何がしたいのか」ということです。つまり、目的は何なのかということ。デザインやエンジニアリングは、それを表現するための手段だと考えています。
「デザインかくあるべし」といったようなものはなくて、いかに目的に対する適切なアイデアを出し、それを純度高く実行するかだと思います。あくまでコンテンツファーストであるということ。目的が明確に定まっていれば、デザインとエンジニアリングのバランスなど、どういう手段をとるのかは、自ずと決まってくると感じます。
鍋田NDC
軸としてのコンテンツファースト。やはり最終的には、シンプルな方法論にたどりつくのですね。