BOOKS
Vol.13
原 研哉 NDCの図書室で網膜に焼きついた写真たち
1960年の日本デザインセンター創業時から社員に親しまれ続けている資料室。
その約2万冊の収蔵本の中から選んだ10冊をお勧めする
「ライブラリーのおすすめ本をシェアするプロジェクト」
第13回目は、原 研哉(代表取締役社長 原デザイン研究所所長 クリエイティブディレクター)が選んだ10冊です。
1
George Hoyningen-Huen
“The photographic art of Hoyningen-Huene”
ホイニンゲン・ヒューンの写真には、しっかりと把握された品質があり、プロフェッショナルの仕事とは、こういうものだよと、教えられたような気分になった。
特にP66の“Swimwear by Izod”は頭に焼ついた一枚。
2
Karl Blossfeldt
“Art Forms in Nature”
一度見たら、眼に焼きついて忘れられない。植物の、クローズアップのモノクロ写真である。
一体どんなレンズで、どう撮っているのかわからないが、拡大されていることで見えてくる植物の肌あい、テクスチャーがとても印象的である。
3
Helmut Newton
“Helmut Newton”
ハイヒールをはいたヌードである。姿勢良く、背すじをピンと伸ばして、挑むように、素晴らしいプロポーションの女性たちが向ってくる。
近代の女性の強さを、欧州の感覚で見事に表現している。P47の4人の女性が歩いてくるヌードは圧巻である。
4
Ansel Adams
“The American Wilderness”
ものすごく、しっかりとした解像度でとらえられた自然の景観である。
ひょっとすると、景観としての自然のイメージは、アンセル・アダムスの写真によって、基礎づけられたのかもしれない。見たのはかなり昔だが、再び見ても、網膜の底に写真の記憶が焼きついているのに気づく。
5
Hiroshi Sugimoto
“Architecture”
いい写真かどうかというよりも、現代アーティスト杉本博司が、どのように「価値」をつくり上げていくのか、というプロセスが理解できる一冊。“∞×2”という焦点の合わせ方で全てボケている近代建築の名作の数々。
知らず、アーティストの術中にはまっていく。
6
Arnold Newman
“Five decades”
ポートレイトとは、こうやって撮るものだと、教わったような写真集。特に、ストラビンスキーと、マルセル・デュシャンのポートレイトには舌を巻いた。今見てもいい。
こういう写真家に撮られるアーティストの存在感もすごいと思う。
7
Robert Mapplethorpe
“Pistils”
この人の男色的感性の魅力を最も端的に理解できたのは、ゲイのヌードではなく、花の写真を通してであった。
花は、まさに生殖器そのものの、なまめかしさとして、とらえられていて、ぞっとする。
そして、あやしく、美しい。
8
Jeanloup Sieff
“Photographien”
ひと時、ジャンルー・シーフが撮るヌードに眼が釘づけになった。
モデルの強い眼。いったいどういう言葉を交わしながら、これらの写真を撮っているのだろうか。被写体を見る眼も強いが、被写体自体も強い。見入られている気分になる。
9
Andre Kertesz
“Andre Kertesz of Paris and New York”
「写真」と言えば、アンドレ・ケルテス、と脳が反応してしまう。
それ程に、原点性の強い作風である。カメラで一体何が撮れるのかの、基点を教えてくれる。P156の“モンドリアンのスタジオ”という作品は何げないが、強く印象に残る、好きな写真である。
10
Robert Capa
“Images of war : with text from his own writings”
撮る才能というよりも、その場に居合わせる才能というか、ドキュメンタリーフォトの原点のような写真の数々である。
ひと頁ずつ、しっかり凝視していくには、読者の方にも力が必要だが、見始めると、終わりまでひきずり込まれてしまう。