10 SELECTED
BOOKS

Vol.12
丸尾 一郎 Thames and Hudsonの本

Vol.12 丸尾 一郎 Thames and Hudsonの本

1960年の日本デザインセンター創業時から社員に親しまれ続けている資料室。
その約2万冊の収蔵本の中から選んだ10冊をお勧めする
「ライブラリーのおすすめ本をシェアするプロジェクト」
第12回目は、丸尾 一郎(第4制作室室長 クリエイティブディレクター)が選んだ10冊です。

1
Jean-Baptiste De Panafieu
“「Evolution [ In Action ] Natural History Through Spectacular Skeletons”

生物の骨格標本のモノクロ写真と解説文のみで構成された本。子供の頃、百科事典の生物の巻が愛読書だった僕には無視できない本。黒いベースに白い骨のコントラストが美しい。余白(余黒?)の使い方が上手く骨の写真だけでも飽きさせないレイアウトが素晴らしい。いわゆる学術書的なアプローチではなく写真集として見ても美しい仕上がり。

Amazonで購入

2
“The Pirelli Calendars Complete”

その昔、下品な企業の応接室などに必ず飾られていたヌードカレンダー、いわゆるエロカレンダーを覚えているだろうか? そんなエロカレンダーの頂点とも言えるのがタイヤメーカーのピレリが50年間制作し続けているピレリカレンダーだ。リチャード・アヴェドン、ピーター・リンドバーグなどその時々のトップフォトグラファーが撮り下ろすスーパーモデルたちのヌード。
クオリティの高さは言うまでもないが、その作品性がアートではなくきちんと「エロ」になっているところが素晴らしいと思う。

3
Stephen Shore
“Stephen Shore Uncommon Places”

スティーブン・ショアーは70年代のアメリカで起こった写真のムーブメント、「ニューカラー」を代表する写真家の一人。大判カメラで撮影されたランドスケープ、モーテルやダイナーの写真には渇いた色と、自由な空気が充満していて何度見ても飽きない。僕は彼の写真やエドワード・ホッパーの絵画から感じるアメリカの質感がとても好きで使えるはずもないのに8×10のカメラの購入を本気で検討したことがある。

4
Erwin Blumenfeld
「Blumenfeld: a fetish for beauty」

ダダイストからファッションフォトグラファーになったアーウィン・ブルーメンフェルドの作品集。彼はファッションフォトにシュールレアリスムの手法を取り入れた作風で知られるが、50〜60年代のVOGUE誌のカバーなどは今見てもまったく古さを感じさせない。昨年東京都写真美術館で開催されたエキシビションもすばらしかった。

5
Alain Borer ; edited by Lothar Schirmer
“The Essential Joseph Beuys”

ドイツ出身の現代美術作家ヨーゼフ・ボイスの作品集。作品よりも社会的な活動や生き様に注目されることが多い人だが僕は彼の作品そのものに強く惹かれる。

6
Tom Himpe
“Adertising Is Dead: Long Live Advertising!”

2次元に捕われないアプローチで周囲の環境まで取り込んで新しい表現に挑戦している広告アイディア集。広告にもまだできることがあると元気にしてくれた本。タイトルが秀逸。今だと、まとめサイトなどで一覧できたりするが、当時は貴重な資料だった。

7
El Lissitzky
“Life・Letters・Texts”

言わずと知れたロシア構成主義の巨匠の作品集。学生時代にダダとロシア・アバンギャルドの強烈な洗礼を受けた僕のロシアの師匠。見返すたびに発見があり、新しいイメージを与えてくれる。
ちなみにアメリカの師匠はアンディ・ウォーホール。

8
Teal Triggs
“The Typographic Experiment: Radical Innovation in Contemporary Type Design”

2003年に刊行された、世界の革新的なタイポグラフィを収集した本。ネヴィル・ブロディやファビアン・バロン後に同時多発的に世界中で起こったネオタイポグラフィのトレンドは、当時の僕にとってスリリングでエキサイティングな事件だった。デヴィッド・カーソンやジョナサン・バーンブルックなどそうそうたるメンバーの中に伊勢克也や立花文穂がキュレーションされている事実に勇気をもらったのを覚えている。

9
“The Pentagram Papers”

世界的なデザインファーム、Pentagramが1975年から発刊している(らしい)冊子を紹介する本。コンテンツも興味深いものばかりだが、どの号もPentagramらしい明快であか抜けたデザインが秀逸でコレクションしたくなる。

10
Ken Sequin
“The Graphic Art of the Enamel Badge”

僕はバッジが大好きで普段もよく服や帽子に着けたりする。そんなわけでこの本はたまらない。
拡大印刷されているせいか、この本のバッジは成形のユルさが強調されていて、とてもチャーミングだ。何時間見ていても飽きない。こういうニッチな本が多いのもT&Hの魅力。