BOOKS
Vol.05
荒井 康豪 貫いてる人の本
1960年の日本デザインセンター創業時から社員に親しまれ続けている資料室。
その約2万冊の収蔵本の中から選んだ10冊をお勧めする
「ライブラリーのおすすめ本をシェアするプロジェクト」
第5回目は、荒井 康豪(第3制作室 アートディレクター)が選んだ10冊です。
1
グレッグ・ブライト
『迷路の本』
作者無名、ジャンル不明、 装幀自身も相当しょぼい本です。ただ「迷路」という大多数の人が首をかしげるようなものに、有無を言わさず、のめり込んでいる作者からは学ぶべきところがあります。なぜかたまに見たくなるのですが、どこに入り込んだのか自分では探せないやっかいな本です。
2
Sophie Calle
“Did you see Me?”
ソフィ・カルは、他人をストーキングして記録したり、何かと物議を醸している人です。ただ、フランスを代表する大変レベルの高いアーティストで、「盲目の人々」などは、えもいわれぬ衝撃がありました。写真や展示レイアウトにはとんでもない美しさがあり、必見です。ちょうどいま、原美術館で展示が行われています。
3
John Warwicker
“The Floating World”
TOMATOからは実に多くの影響を受けました。現代ではいち早くデザインを発明に置き換えはじめた人たちではないでしょうか。この本はいわばジョン・ワーウィッカーの哲学書で、子供の頃ひっかかっていた事、影響を受けたものなど本当にパーソナルな題材で魅力的なグラフィックを仕上げています。参考になります。
4
Sandberg
“sandberg designer director of the stedelijk”
戦後のオランダで最も国際的な影響力のあったデザイナーでディック・ブルーナに影響を与えたことでも知られる人です。彼は、第二次世界大戦中、ナチス占領下でアーティストレジスタンスに活発に参加したと言われています。逮捕されれば即処刑という状況で創作に対する情熱を一切絶やさなかったことに心が震えます。
5
Pentagram Design Partnership
“Living by design”
一流であり続けるデザイン会社、ペンタグラムの初期の作品集です。現在も素晴らしいデザイン会社ですが、この本に載っている「白いシャツのレターヘッドP70」「美術館への入場料講義ポスターP100」からはデザインへのキラキラした思いが伝わってくるようで・・・個人的には初期の空気の方が好きです。
6
Philip B Meggs
“A History of GraphicDesign”
鉄板すぎて紹介するのが恥ずかしいとはこの本のことです。それゆえ、逆に借りる人がいないのかもしれません。ただ、これは本当に良書だと思います。世界中の学生がグラフィックの歴史にふれる時、等しくこの本に出会います。日本の項目では、会社は二つしか出てきません。そのうちの一つは弊社です。
7
Bernd&Hilla Becher
“TYPOLOGIES”
言わずと知れたベッヒャー夫妻です。この二人がいなかったら現代アートの世界は全く違ったものになっていたと思います。表面的には無表情でありながら、内面的には完全に狂っているというこの感覚が大好きです。指導を受けたわけではないですが、ベッヒャー派を名乗れるなら名乗りたいです。
8
Matthias Schaller
“The Mill”
僕みたいな人がいるんでしょうね。ベッヒャー夫妻が好きすぎて、ついに彼らの工房に入り込んで、中の様子を写真におさめた人の写真集です。もちろん、作品ほどミニマムな世界ではありませんが、生活観がありそでなさそで、ところどころ効いている黄緑色やオレンジが可愛く、美しい写真たちです。
9
“U&lc”創刊号
ハーブ・ルバーリンが設立したITC社で発行していたタイポグラフィーに関するタブロイド紙「U&lc」。このタイポグラフィーを新たな水準へと押し上げた本の創刊号が古新聞さながらに本棚の一番下に押し込められていた(旧社屋時代)のを見たときには焦りました。ただこんなものが普通にあること自体には感服します。
10
Damien Hirst
“I want to spend the rest of my life everywhere,with~”
若き日のダミアン・ハーストの代表作。この人の強気な姿勢が好きです。世の勝ち組の頂点にはこの人がいるんじゃないだろうかと本気で思ってしまいます。美術作品集の概念をくつがえすような装幀を手がけたのは一番勢いがあった時期のジョナサン・バーンブルックです。