“snote” ─── スノート。書く気分を高めるアプリの開発 #1

FOCUS

Webやアプリなど、テクノロジーを活用したデザインやサービスについて
新たな仕事を開拓する日本デザインセンター(以下NDC)のITプロジェクトチームから、
その第一弾として、書く気分を高めるアプリ“snote”がリリースされます。

snoteとは、NDCが培ってきた文字組のノウハウを活かし、縦書きへも対応した日本語向けテキストエディタ。
必要な機能を最小限にとどめたシンプルな画面に文字が美しくつづられる、素のノートに徹しました。
開発を担当した横田泰斗(以下横田)、北本浩之(以下北本)が、この新作アプリについて語ります。

────snoteの特徴は
何ですか?
────snoteの特徴は何ですか?

北本

文章を書こうと思ったときに、なかなか捗らないなということってありませんか?その理由として文字に集中できないということがあるのかな、と思って。
今いろんな情報が画面内にありすぎて視界が煩雑になっていますよね。それをリセットして、まっさらな紙に気持ちよく書く感じ。何もないところにすっと文字を書き始めることをアプリでできないかなと。

横田

書くことに集中することだけを考え抜いた結果こうなりました、という感じですね。

北本

日本語は縦書き、横書き、漢字、ルビ、ひらがな、カタカナ、英数字と、多要素を複雑に組み合わせて文書を書くのでアプリとして多機能なものが多くて、一方で、書く気分を高めるとか心地さとか情緒性を追求したものは見当たらなかったんです。それを実現したのがsnoteの一番の特徴ですね。

横田

個人的な体験談なんですけど、「文学フリマ」というイベントで出すために友達と小説を書いたことがあったんですよね。最初はMacのメモ帳を使っていたのですが、どうも自分の書いている文章が生っぽくて進まない。そこで気分を変えようとInDesignで書いてみたら、それだけでテンション上がって一気に書けちゃって。このような書くことに対するピュアな喜びを、普段書くことを仕事にしていない人にもsnoteで感じてもらえたらいいなと。

北本

snoteは原稿を書くためのアプリで、ページとかレイアウトの概念もない。

横田

素直に書く。気持ちよく書く。それができれば自然と文章の質も良くなると思うんです。気持ちよさのために例えばsnoteでは、書き出しの1行目が上ではなくてセンターに来るんですよ。真っ白なスクリーンの真ん中に言葉が書かれると、ぐっと来るんですよね。普通の言葉でもよく見える気がして。

────なぜsnoteを開発しようと
思ったのでしょう?
────なぜsnoteを開発しようと思ったのでしょう?

北本

最初は書くことよりも読むほうを考えていたんです。例えば知るべき情報が載っているサイトでも、わかりにくい文字組では読む気にならない。それを書籍のように読みやすくするリーダーアプリはどうかなと。2ちゃんねるもそのアプリを使うとぜんぜん違う情報に見えるのではないかと。でも技術的に難しいところもあって、書く方へいきましたね。文字組やデザインに対するNDCのノウハウも活かせますし。

横田

アイデア出しの段階では100案以上ありました。NDCは社内にテクノロジーを持たないので、果たして自分たちがやる意味があるものかというのはひとつ指針になりました。他の会社が似たようなものを開発したときに負けないと思えるか。あとは自分が本当に使いたいと思える、しっくりくる、そういう感覚が大事だなと。

横田 泰斗
Webデザイナー

1984年東京生まれ、埼玉育ち。制作会社を経て、2012年より日本デザインセンター勤務。入社と同時に、釣り部に入部。入部後の実績として、アオリイカ2.0kg、スミイカ1.5kg、真鯛68cm、ブラックバス58cmなどがある。釣りの傍ら、ウェブサイトや陶器を制作。また、年間200を超える楽曲を制作し、映像や空間に楽曲提供も行っている。

────実際の制作は
どのように進んだのでしょう?
────実際の制作はどのように進んだのでしょう?

北本

僕が画面デザインやアイコンを考えたら横田さんに投げて、横田さんがデザインをブラッシュアップしたりモーションをつけたり、毎回キャッチボールをしながら詰めていった感じです。あとは月1回の社内レビューでアドバイスをもらいました。

横田

最初はとにかく簡素にしたくて、行間、フォントサイズ、書体もぜんぶ1種類だったんです。でも実際に執筆をしている人たちに意見を聞いていくと、必ず使う機能があって。その中から取捨選択して今の仕様になりました。

北本

iPhoneのアプリを制作しているTHE GUILDの深津さんもプロジェクトチームのメンバーなので、クリック数などについてアドバイスをもらいました。アプリは操作性が大事なのでプロトタイピングツールを使ってシミュレーションを重ねました。デザインしている時はいい感じでも、動かしてみると使いづらかった、ということもあって。あと、グラフィックの仕事はミリ単位以下で調節するようなことをしているので、それと比べるとピクセルという単位は大きくて、もっと細かく調節したいなと何度か思いました。

北本 浩之
デザイナー/アートディレクター

1984年大阪生まれ大阪育ち。広告会社を経て、2012年より日本デザインセンターに入社。トヨタ自動車のアプリ開発、Toyota 86カタログやウェブサイトを担当。気分転換は、掃除と整理整頓。溜まった書類をシュレッダーにかける事とMacのゴミ箱を空にするのが毎日の楽しみ。最近の悩みは、断捨離をしすぎて捨てるものがない事。

デザイン解体新書 工藤強勝

北本が参考にした書籍
『デザイン解体新書』工藤 強勝 監修

プロジェクト初期の全く別な案で利用されたリーンキャンバス。

────リリース後の展望は?
────リリース後の展望は?

横田

3月に社内でsnoteの発表をしたんですが、後日、社内のコピーライターが、このアプリを使っての俳句イベントを考えているらしいよと聞いたんです。作家さんを呼んでsnoteを使って作品を見せる句会をするようで。そういう盛り上がり方はすごくうれしくて、ほかにも想像もしていなかった使われ方をしたり、もしくは大きな間違いが見つかったりするかもしれない。そうしたレビューがリリース後にいただけないかと楽しみです。

北本

ここからがスタートですよね。世の中に出してさまざまな意見を聞きながらより良いアプリにしていきたいです。

横田

売ることの先にある目標は書き手を増やすことです。読むのは好きだけど、書くことはちょっと敬遠してしまう。そんな人たちに書く楽しみを知ってもらえたら。snoteがそのきっかけになれたら。そんなことを考えています。サイトも作りますが、アプリの機能説明だけでなく、文学系のイベント紹介や、筆が進む場所の提案とか、ゲストに物書きを呼んでワークショップをしたりとか、サイトそのものが書くための手引きになれればと。

北本

日本語版の反応がよかったら英語版もぜひ作りたいたですね。日本語版では縦書きと横書き、2種類の表示を用意していますが、英語版ではオックスフォードルールとシカゴルール、それぞれで表記ルールを切り替えられるとか。縦書きのノウハウを活かすなら中国語版の展開もあるかもしれません。

横田

評判が良かったら、他言語版もぜひ作りたいですね。テキストエディタはデータとしての正確性を重視しているのか、情緒性に重きを置いたものが少ない気もするんです。snoteを次につなげて、アプリをはじめ新しい分野の仕事を増やしていきたいですね。

北本

ところで、まだアプリの名前が決まっていないんですよね。商標の問題もあってsnoteではなくて、stone(ストーン)にしようかと思案中なんです。「素のトーン」という意味が込められています。もとを遡れば石に文字を彫ることから書くという歴史が始まったこともありますからね。snoteのアナグラムでもあります。

横田

ちなみに価格は3000円です。たとえこれを使わなくても文章は書けるけど、書くという行為自体にこだわりを持ってその質を上げることのできるアプリケーション。そう捉えて価格を決めました。テスト版を使った社内のコピーライターからは背筋が伸びるような感じがしたという声も届いています。いままでにはない書き心地をぜひ体験してみてください。

────── snote(あるいはstone)のリリースにご期待ください ──────

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