情報デザインの一つの切り口は「わかりやすく明快に」ということです。色々なものを一緒に詰め込まない。動く現実を簡潔に集約して人の頭に焼き付ける。人の限られた時間を情報の理解のために無駄に消費させてはいけない。高度に編集されていれば、瞬時に理解を生み出せる。
人がわかるというのはそんなに複雑ではなくシンプル。円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフの三つだけでも、適切に使えばかなりのことは表現できる。それを視認できる大きさと色で的確に表示する。どういうデータを元に何を語るかという、論理の明快さと連続性が重要なのです。
別の観点もあります。先ほどと逆のようですが、コミュニケーションとは、相手にわかったと思わせることではなく、「いかに知らなかったか」を覚醒させること。情報を与える「インフォーム」に対して、ぼくは独自に「エクスフォーム」と言ったりしています。知っているつもりのものを「未知化」していく視点。できるだけ少ない、整理された情報を使って、結果として「もっとわかりたい」という主体的な能動性をどれだけ引き出すかが肝要です。
朝日新聞 2012年2月6日
「文化の扉」より
Mar 07, 2012