放射線リテラシー
原発事故については、まだ予断を許さない状況だが、自分たちに出来ることは放射能に対する基本的なリテラシーを、新たな常識として社会に浸透させていくことに協力することである。原発の是非を今、突き詰め過ぎると福島は逆に追い込まれてしまう。まさに逃げ場を失ってしまう。
放射線を無闇に恐れるのではなく、その危険度を適正に判断できるリテラシーを向上させることが先決である。風評被害は、農作物や漁業だけの問題ではない。観光立国をめざす日本にとっても深刻な事態である。すでに日本を訪れる観光客の客足はぴたりと止まっている。工業製品すら日本製品の輸入を制限する国が出始めている。放射線リテラシーを世界に浸透させなくては状況の好転はない。
日本は、これを契機に低エネルギー消費の先進国へと脱皮していけるはずだし、原発は新たなフレームの中で再考を余儀なくされるだろう。安全性もさることながら、原発は処理の困難な廃棄物を残してしまう点に根本的な問題を抱えている。クリーンエネルギーに切り替えていくことには賛成である。しかしその前に、放射性物質や放射能についての理性的な対応力を世界にアピールしていくことが必要である。まずは高い密度と精度を携えた、客観的で説得力のある放射線量の測定から始め直す必要があるだろう。これは原発事故に遭遇してしまった国の避けられない課題である。