「デザイン」でなく、リアライズする 「デザイン」でなく、リアライズする 「デザイン」でなく、リアライズする
自分がそこに現前させたい状態を、埋める作業をしている気がしています
矢内 里
第4制作室/アートディレクター
1976年新潟生まれ、埼玉育ち。東京藝術大学美術学部デザイン科卒。東京大学大学院学際情報学府修了。エディトリアルの事務所を経て2007年より日本デザインセンター第4制作室に在籍。趣味は庭づくり、と言いたいけれど、それほど時間をかけられていない。芝生には多少雑草が混ざっている方がいいと思う方。DDAディスプレイデザイン大賞、DSA空間デザイン優秀賞他
アートディレクターの矢内里です。デザインセンターでは、三越伊勢丹の仕事を中心に担当しています。取り組み続けきたクリスマスキャンペーンは、今年で7年目。最初の5年間はKLAUS HAAPANIEMIさんというフィンランドの作家さんを起用したものでしたが、今年も新たな企画を立てたクリスマスキャンペーンがローンチしたところです。
2015年のクリスマスのモチーフは、フィンランドのフォークダンス “ジェンカ”です。ジェンカは、1960年代に世界中でヒットした、皆でつながって踊るダンスですが、“つながって踊る”というスタイルにヒントを得て、「ダンスで世界をつなぐ」、なおかつ「三越と伊勢丹もつなぐ」との意味を込めて、シンプルに企画を行いました。またこの企画で肝になっているのが、映像やグラフィックで展開される作家たちのセレクトです。いいと思える作家を世界中から探して、私から直接オファーを行いました。それと同時に、実際に人がジェンカを踊るということも大事でしたので、実写映像での展開も企画当初から念頭おいて行ってきました。撮影時には、公園や中華料理店の前などさまざまな場所で、ジェンカを踊ってくださる方とともに私もずいぶんジェンカのダンスをしました。
もともとランドスケープや空間的な興味から美大への進学を選んだので、美大時代の作品はインスタレーション的な作品が主でした。モノや素材などのそれ自体というよりも、そこにある状態を創り出すことに興味があったのかなという気がしています。
最初に仕事としてデザインに携わり始めた頃は、カッコつきの「デザイン」をやろうと思っていました。今はそうではなく、デザインを“自分がそこに現前させたい、リアライズしたい状態”としてとらえていて、そこを埋める作業をしているという気がしています。それは美大の学生の時からやっていることと、シームレスにつながっていると思っています。