Oct. 2015

コピーライターの気持ち コピーライターの気持ち コピーライターの気持ち

飯塚 逸人/第1制作室/コピーディレクター

年を重ねるごとに、考えることや書くことが楽しく感じられます。

飯塚 逸人

第1制作室/コピーディレクター

1969年栃木県足利市生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。広告制作会社、広告代理店を経て、1997年日本デザインセンター入社。第49回、第50回、第51回宣伝会議賞受賞。最近の仕事に、トヨタ自動車「ヴェルファイア」カタログ、放送大学「学生募集」広告、東京メトロ「スマートフォン用アプリ」告知広告など。

read more close

こんにちは、飯塚逸人です。大学を卒業してから幾つかの制作会社や代理店を経て、日本デザインセンターに入社しました。今までさまざまな分野の仕事を担当してきましたが、トヨタ自動車のカタログの制作は長く担当している仕事のひとつです。クルマの膨大な資料を読み解き、仕様にまで踏み込んでコピーを書くことは今では日常ですが、この会社で初めて覚えた技術です。面接の時に仕事の内容を聞かされ「できますか?」と尋ねられた時に、入社したい一心で「できます!」と答えたものの、専門的な用語を駆使しながらコピーを書けるようになるまでは、それなりに時間がかかりました。当時根気よく教えてくれた先輩ライターやプロデューサーには本当に感謝しています。

こういう言い方も変かもしれませんが、そもそもはコピーライターになりたいという強い意志はありませんでした。僕が学生時代の90年代前半は広告が盛り上がっていた時代。そうした文化に触れたいと通った広告の学校では、人の目を惹き付けて放さない糸井重里さんや浅葉克己さんといった広告界のスターたちがホワイトボードの前で講師をしていました。もちろん授業はプレゼンのようで、楽しくないはずはありません。広告界をめざす友人たちも増えて、自然な成り行きでこの仕事を選ぶことになりました。

放送大学の学生募集の広告制作も、2年続けて携わっている仕事です。コピーを書く時には、なるべくその商品やサービスを通して自分なりの視点を持ちたいと考えています。放送大学もぜひ体験してみたいと、好きな科目だけを選択する科目履修生に申し込んでみることにしました。選んだ科目は「西洋哲学」。世界史の授業の中で“ギリシャ哲学”という言葉には触れたけれど、実際はどんなものなのだろう。数千年前の人の考えと何が同じで何が違うのか見出すことができたら面白そう。そんな好奇心から、学んでみようと思ったんです。教科書も揃え、深夜机に向かい、課題も提出し…と順調に勉強を進めてきましたが、じつは肝心のテスト日に、仕事のスケジュールをどうしても繰り合わせることができず、テストを受けることができませんでした。残念ですが結果は当然落第です。僕なんか一単位さえ取れないのに、昼間仕事をしながらたくさんの単位を取得して、卒業している学生もいるのですから、すごいですよね。ほんのわずかな受講体験でしたが、広告を作る上での心構えができました。

今さら?と言われそうですが、ここ数年コピーを書くことがすごく好きになったんです。年を重ねるごとに、考えることや書くことが楽しく感じられるようになりました。若い時より気負いがなくなったせいでしょうか。その効果か、気が向いた時に応募を続けてきた『宣伝会議』主催の宣伝会議賞にも、入賞することが多くなりました。取り組むのは仕事の空き時間や休日など。毎朝犬と散歩をしているのですが、その時間もよく利用しています。協賛企業賞を頂いた、長谷工コーポレーションの『パパはマンションを見上げた。ボクはパパを見上げた。』は、柴犬のチェスが散歩中に僕をじっと見上げる姿からヒントを得たコピーです。

数年前から弓道の道場に通い始めました。月に2回ぐらいしか通えませんが、胴着に着替え、弓に集中する間は、日常から一番離れた場所へ行くかけがえのない時間です。今回の撮影で気づきましたが、僕、以前より背中がまっすぐ伸びていますね。少しずつ上達もしている気がします。職場では後輩に教える場面も多くなった僕も、ここでは新米です。先生の教えに従い、その通りに体を動かしてみる。すると良くなる。そうした自分の変化に気づく喜びは、日本デザインセンターに入社したばかりの気持ちをちょっと思い出させてくれます。

日本デザインセンターは
Facebookでも
情報を発信しています。

LIKE TO US