Jun. 2015

パッケージデザインの仕事

吉永 三恵/パッケージデザイン研究所副所長/ アートディレクター

1ミリ2ミリの変化でも、その差異は必ず存在感として現れます。

吉永 三恵

パッケージデザイン研究所副所長/アートディレクター

横浜市出身。東京学芸大学教育学部美術科卒業。 1992年日本デザインセンター入社。 CI研究所を経て、1998年よりパッケージデザイン研究所に所属。 「JR西日本 HOTEL GRANVIA」CIデザイン、「青森県イメージアップシンボルマーク(最高賞)」、「鹿児島港シンボルマーク」、パッケージデザインに「竹鶴」、「熟撰」、「十六茶」、「WILKINSON」など、数多くの商品デザインに携わる。

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こんにちは、吉永三恵です。パッケージデザイン研究所は、日本デザインセンターの中でもパッケージデザインに特化した部署です。中でもアサヒビール、アサヒ飲料とは永いおつきあいになり、私もお茶からビール、重厚なウィスキーのパッケージまで、様々な仕事に携わってきました。暮らしの中で人が触れるもの、限られた面積の中でコミュニケーションをするという点で、パッケージデザインは広告とは異なる知見が求められる仕事です。またそこに面白さを感じています。

通常、ひとつのデザインが完成するまで約半年から1年ほどかかります。例えばウィスキーのラベルならコンセプトから商品ロゴ、さまざまな要素、それらをじっくりと吟味し、デザインを行います。時にはバーの棚に置かせてもらい、他の商品との見え方を検証することも。デザイン、検証、調査、修正を幾度も繰り返す中で、アイディアが100を超えることも決して珍しくはありません。世に出るパッケージは、こうして絞り込まれたすべての結晶です。また普段から、どんな人がどんな時に何を飲んでいるのかを観察することが習慣づいています。飲料のデザインは生活と深く密着したものなので、ディテールも大事ですが、人や環境など周辺に目を配ることが重要です。街での観察がヒントとなり、デザインへと変換されることもしばしばです。

入社してすぐ配属されたのはCI研究所です。所長を務めていた上原昌は、アサヒグループやトヨタ自動車のCIを手掛けた人物です。当時はコンピューターがまだ現場に1台あるかないか、方眼紙に雲形定規やコンパスを使い、溝引き、ロットリングで手描きのデザインを行う時代です。私にとって父と娘ほど年齢が違う大先輩でしたが、所内でも圧倒的に緻密に作品を作っていたのが上原でした。例えば曲線を描く際も、デザインの元を紙に描き、それを実際にねじってカメラで撮影して模写するといった具合です。そうして生まれた曲線は、図形的には緩やかでも揺るぎない緊張感を携えています。所員数名で案を出しても、選ばれるのはいつも上原の作品でした。なぜ強いのか、なぜ違うのか。新米の私は、日々考えながら仕事をしていました。タイムリミットも間近、デザインもある程度のレベルに達したという時に「もう少しつめたい」という衝動に駆られることがあります。そこで手を置かずに、もう少し探ってみる。すると良くなる。見た目に分かりにくい1ミリ2ミリの変化でも、その差異は必ず存在感として現れます。妥協なく仕事をする上原のもとで学んだことが、今の私に大きな影響を与えています。

昼間は打ち合わせ、夜はデスクでデザインという毎日なので、帰宅も決して早いとは言えません。趣味は?などと聞かれると困ってしまいますが、お酒を飲むこと食べること、そして料理は好きですね。何を作ろうか頭を巡らせている時、料理をしている最中は、ふっと気分が変わります。毎朝、高校生の息子と自分のお弁当も作っていますよ。気に入ったポストカードや切手で手紙を書くことも良い気分転換となります。小学生の娘とは会話の時間が充分にとれないぶん、手紙やメモでおしゃべりをしています。私自身はわりとざっくり楽天的なタイプです。ただ何事も強い「好き」という気持ちに導かれ、前に進んでいるように思います。日本デザインセンターはよい意味で厳しい会社ですが、入社して20年以上もの間デザインの仕事を続けているのも、好きだからなのでしょう。もっと上手くなれる、もっと高く飛べる、と今も思ってデザインと向き合っています。

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