Oct. 2014

人の誇りとなるものを発見する仕事 人の誇りとなるものを発見する仕事 人の誇りとなるものを発見する仕事

是方 法光/第1制作室 コピーディレクター

既に在るものの中に答えもコピーも必ずある、と感じています。

是方 法光

第1制作室 コピーディレクター

1979年奈良県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、日本デザインセンター入社。以来、物事を深く掘り下げた丁寧・緻密な仕事をモットーに、セールスプロモーションのライティングから、商品・展覧会等のコンセプトワーク、本の執筆・編集まで、言葉を通したコミュニケーションに幅広く取り組む。歴史、文化、地域活性に関わる仕事も多い。 最近の仕事として、トヨタ自動車86「PRODUCT NOTES」、CROWN「PHILOSOPHY NOTES」、国土交通省「半島のじかん」、藤田観光「椿山荘三重塔」「椿山荘選書」、東京都八王子市「高尾599ミュージアムプロジェクト」、北海道清里町「じゃがいも焼酎デザインプロジェクト」など。

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こんにちは 是方法光です。お坊さんみたいだね、とよく言われる名前の「法光」は、信仰心の厚い祖父がつけてくれたものです。幼い頃は、祖父母に可愛がられ、一緒に仏壇に向かい読経することが日常の少し変わった子どもでした。だから文章との出会いは、僕の場合、お経…かもしれません。

入社以来、主にトヨタ自動車を担当するチームに所属しています。入社1~2年は学生時代の自信は何処へやら、同僚に比べて自分のコピーはまだまだ…と悔しく思うことが続きました。この頃行き詰ると、築地本願寺の本堂でよく気分転換をしていました。そんな日々が続く中、転機を与えてくれた仕事との出会いがありました。

2007年から約2年間『かけがえのない一台』という、トヨタのクルマづくりそのものに焦点を当てた新聞広告の制作に携わりました。全国のディーラーや工場を訪ね、現場で活躍する社員の皆さんから話を聞き出し、コピーを書きました。担当した方のひとりはサービスエンジニア。つなぎを着て油にまみれて働く20代の女性でした。仕事を選んだきっかけは?を尋ねると「クルマが好きだから」という答えが返ってきました。「それは当たり前だろう」と内心思っていましたが、先輩コピーライターの反応は違いました。「若者のクルマ離れも語られる時代、若い女性から“好き”という言葉が出るのはすごいこと。これをキャッチコピーにするべき」と。なるほど!と思いました。当時の僕は大局観が足りなかったのですね。時代を敏感に感じ、言葉を的確にキャッチしてくるから、キャッチコピーなんじゃないか。自分の中から必死にコトバを作ろうと試行錯誤していた僕が、そう気づいたのはこの時です。この経験はその後、仕事に向かう姿勢を変えてくれました。

地域とクリエイターを結びつける活動を行う、みつばち先生こと鈴木輝隆江戸川大学教授とのご縁があって、ここ数年は日本全国の地域に根ざした仕事・自主活動も行っています。国土交通省の地方振興事業『半島のじかん』への参加、北海道斜里郡清里町の名産『じゃがいも焼酎』のブランディング、また鈴木ゼミの学生と共に活動する青森県鰺ヶ沢町のタウンプロモーションなど、さまざまな土地に訪れることも多くなりました。こうした場では、じっくりと地元の皆さんと向き合って話をし、関係を築き、たくさんの情報から何を残すべきか、発信すべきかを見つけ出すことが僕の役割と思っています。これを僕は「コトバを迎えにゆく」と呼んでいますが、そこに既に在るものの中に答えもコピーも必ずある、と感じています。また以前出会った九州の方に、東京から参加する僕らの仕事は、「そこに暮らす人が気づいていない、光や輝きを集めることなのでは?」と言って頂いて、そのこともずっと心に残っています。コピーライターは広告を作るだけじゃない。人の誇りとなるものを発見することが仕事だと思っています。

今年、入籍しました。婚姻届は移住促進のプロモーションをお手伝いしている北海道上川郡東川町の役場に提出しました。この町の婚姻届は、受理後に自分たちの手元に残せるユニークなものなんですよ。提出時には、ポスター制作でお世話になった方に町案内してもらったり、移住した家族が営むヴィラに泊まったり、かけがえのない思い出になりました。出身は奈良ですが、ご縁があった町が僕の第二の故郷だと思っています。

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