Jan. 2015

自分を空の器にすること

岡崎 由佳/原デザイン研究所 デザイナー

未知や偶然を受け入れれば、その先に何かがはじまるはず。

岡崎 由佳

原デザイン研究所 デザイナー

1987年東京生まれ。武蔵野美術大学修士課程修了。2012年より日本デザインセンター原デザイン研究所に勤務。「犬のための建築」「竹尾ペーパーショウSUBTLE」といった展覧会の仕事の他、パッケージデザイン、サインデザインを担当。第61回朝日広告賞入選。

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こんにちは、岡崎由佳です。大学3年生の時、先輩からの紹介でアルバイトとして原デザイン研究所の仕事をお手伝していました。研究所のスタッフのサポート役として働くなかで、クライアントも、メディアも、コミュニケーションの方法も限定されないその柔軟な仕事ぶりが自分の性に合っているんじゃないかと感じ、大学院卒業後、採用募集に応募して入社しました。

原デザイン研究所では、サインデザイン、パッケージデザイン、紙の見本帳づくりなど、ベーシックなグラフィックデザインの仕事を担当しながら、同時にいくつかの展覧会に関わってきました。「TOKYO FIBER SENSEWARE」、「HOUSE VISION」、「犬のための建築」、「SUBTLE」などです。展覧会で行う仕事は、いわゆるデザイナーの職域の範囲に収まりません。参加作家と展覧会ディレクターとの仲介や会場探し、空間設計、什器などの施工チェック、書籍のデザインと編集、プロジェクト全体の進行管理など、その時々の必要に応じて様々な役割を担当してきました。

特に印象に残っているのが2012年の「犬のための建築」です。担当スタッフが少数だったこともあり、アシスタントとして前述の役割すべてに携わりました。所長の原からはよく「デザイナーはデザインができて当たり前。それ以外のことができて一人前」と言われるのですが、この経験によって、ひとつのプロジェクトを無事に離陸させ、確実に着地させるための総合的な腕力のようなものを、以前よりも身につけることができたと感じています。もちろんまだまだ細腕で、鍛えるべき余地はたくさん残っているのですが。

私は何事にもこだわりや執着がなく、自分を空っぽの存在だと思っているんです。今の仕事も、その時々に自分の触手が反応するものを受け入れ、素直に引かれていくうちに、自然とたどり着きました。デザイン制作においても、手を動かすことで知らず知らず生まれる偶然や未知を大切にしているので、与えられた課題に対して求められる答えからはみ出した解答をすることも多々あるのですが、それを「おもしろい」と言ってくれる寛容な環境がいまの仕事場にはあり、それは幸せなことだと感じています。また日頃の仕事は、展覧会を中心にいわゆるクライアントワークではないものばかりです。参考にするべき事例のないなか、方法論そのものを考えつづける日々はハードと言えばハード。でも私はそんな無制約な状況こそ楽しめるんです。少し前の話になりますが、大学院の卒業制作もそうでした。図書館や古本屋をまわって数学、物理、生物、アートなどのドローイングを制限なく何百と集め、一冊にまとめた作品です。そこから何かの結論を出すというよりも、長く長く考えるための素材を集めている感じでしたね。

この4月から、デンマークのデザイン会社コントラプンクトに研修出向します。日本デザインセンターとコントラプンクト社の社員が、半年間お互いの会社で働いてみるexchange programというプロジェクトの一貫です。留学にあたって、何か具体的な目標を設定してはいないんです。むしろその逆。自分を空の器にしてあらゆるものを体全体で受け入れれば、その先に何かがはじまるだろうと思っています。自分探しの旅なんて言葉がありますが、私の場合は「自分なくしの旅」と言った方が近いでしょうか。到着するための目的地はつくらず、歩むための方位だけをつくる。結局のところ、ひたすらに考えつづけるのが好きなのかもしれません。

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