Dec. 2014

最速理解のデザイン

中 浩徳/第5制作室 アートディレクター

いつか「世界最速の英文法参考書」をつくってみたい。

中 浩徳

第5制作室 アートディレクター

1971年愛知県生まれ。武蔵野美術大学卒業。広告制作会社を経て、2000年より日本デザインセンター名古屋支社に所属。トヨタ自動車のカタログや販促ツールなどを担当。最近の仕事にトヨタ自動車「カムリ」カタログなど。

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こんにちは、中浩徳です。いまは名古屋支社でグラフィックデザイナーをしていますが、元々は花火師になりたいと思っていました。デザインと花火、一見関係がないようですが、打ち上げた花火で大勢の観客を歓喜させる仕事と、ひとつのグラフィックを通じて社会の人々とのコミュニケーションを図るこの仕事には、どこか共通点がありますよね。そう思わせてくれたのは、高校生のときに地元名古屋のパルコで見た、石岡瑛子さんや井上嗣也さんたちのポスター。一枚のポスターで道行く人々の印象を鷲掴みにする、えもいわれぬ表現力の強さに憧れを抱いて、デザイナーを志すようになりました。

名古屋支社に配属されて以来、担当し続けているのがトヨタ自動車のグラフィックツールです。外観、内装、メカニズム、スペックなど、新車が備える膨大な情報を、読み手の理解のスピードのメカニズムが最速になるよう翻訳するのが僕の仕事です。そんな仕事のひとつの指針となったのが、2008年に担当した「iQ」のスタッフマニュアルでした。スタッフマニュアルは、全国の営業所のスタッフが新車について学ぶためのいわば参考書。日々の営業対応で多忙を極める彼らが、ちょっとした空き時間にも学習できるようにとつくったのが「30分で読めるスタッフマニュアル」でした。とにかくページを開いて最初に目に飛び込んでくる写真とコピーさえ読み進めれば、新車の概要が一通り理解できる仕組みを構築しました。

また情報処理の方法同様に大切にしたのが、ストレスを感じさせないレイアウトです。情報量の多いマニュアルに大きな余白を取り入れ、読み手にとって心地のいいデザインを丹念に探りました。どんな媒体でも、人は端的に整頓されたデザインに触れた方が能動的に内容を吸収できると思います。一見無駄なスペースのようにも感じる余白も、飽きることなくページをめくってもらうために欠かせない要素。この考え方を応用して、いつか「世界最速の英文法参考書」や「子供でも書ける確定申告書」などをデザインしてみたいと思っています。

仕事のない休日には妻と二人でよく散歩に出かけます。住まいが常滑焼きの産地に近いのでときどき立ち寄るのですが、そこで買った急須を最後にご紹介します。常滑焼きは釉薬を塗らない素朴な表情が特徴で、どちらかというと見栄えは地味。でもお茶を本当においしく淹れるために、あえて釉薬を使っていないと作家の方から伺いました。奇をてらわない簡潔な造形も、おいしさのために自然と生まれたかたちとのこと。自分もそんなつくり手でありたいなと、ちょっと自分を戒めるように毎日この急須でお茶を飲んでいるんです。

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