1986年1月、アサヒビールはCIを導入し、新生アサヒビールとして発進。その原動力のひとつがコーポレートマークを中心に据えたパッケージデザインである。新しいアサヒビールのイメージを構築するために消費者との最大の接点であるパッケージをメディアとして捉え、CI導入最初のパッケージデザインにはコーポレートマークが際立つデザインが採用された。これがその後のパッケージデザインの方向を決定づけた。コーポレートマークをパッケージに展開するにあたっては、ビールらしさを出すためにマークに細い輪郭線を付け加えた。
翌年のスーパードライ登場とともに、アサヒビールの大躍進が始まった。それまでのビールの名前はラガービール、生ビールといった製法の違いでしかなく、スーパードライというネーミングで味を訴求するという新しい試みを消費者に提案。当然、パッケージデザインにも新しさを表現することが求められ、辛口文化に呼応した商品コンセプトである、今までにない味をどう表現するかが鍵だった。アルミがもつメタリックのヒヤッとした感触と曲線を排したシャープなフレーム、そしてスミ文字の中にワンポイントの赤を配したデザインがその回答である。追い風になったのは家庭での缶化率の高まりで、「瓶から缶の時代」に移行したことだった。瓶のラベルよりも、素材そのものがメタリックである缶のデザインのほうが、より輝いて見えるからだ。当時、オイル缶のようだと言う人もいたが、発売日に店頭の冷蔵ケースに並んでいる様子を見に行くと、従来のビールらしいデザインが並んでいる中でメタリックシルバーが近未来的でモダンな雰囲気を醸し出し、店頭において圧倒的な存在感があった。缶にうっすらと水滴がついていて、手に取るとひんやりして喉がなり、これこそパッケージデザインの効果だと確信した。パッケージデザインは陳列効果だけでなく、手にとった瞬間の感じ方もとても大切であり、ストーリー性が求められている。スーパードライで言えば、メタリックシルバーが核になる。デンマークのデザイナーがヨーロッパで発売されているスーパードライを見て私に言った。「このビールはとてもクールだ!」。メタリックシルバーは先進的な色であり、シャープ、モダン、都会的といったイメージを想起させるとともに、辛口という味覚を感じさせ、冷えたビールのアイコンとなって、消費者の心の中に残っている。スーパードライが支持されたのは、新生アサヒビールの挑戦、品質に対する思いがスーパードライに込められていると感じ、そのパッケージにアサヒビールに対する期待感を抱いたからなのではないだろうか。
そういう意味で、パッケージデザインは極めて効率のいいブランディングであり、重要な柱であると言える。
スーパードライは1996年、ビール単独ブランドシェア1位に輝き、現在もその地位にいる。一過性に終わることのない息の長いデザインを創出するためには、ブランド資産を確実に積み上げてゆくことが重要である。その積み上げ作業とも言えるのがパッケージデザインのメンテナンスである。たとえば、缶のデザインも時代に合わせて、バックにグレーのストライプを敷き、ほんの少し進化させている。また、発売20周年にはリキャップできるボトル缶を限定発売し、ビールの新しい飲み方を提案した。新製品が次々と発売される中で長年にわたって愛されるブランドになるために、常に消費者の目に新鮮に映るようにすることは大切な作業である。その時々の市場動向を意識しながら進化する、そこにデザインの重要性があると思う。





