’05
おいしいキッチンプロジェクト

地域活性化事業によるコンソーシアムブランドのロゴマークデザイン

商品紹介タグ
CL 地域産業創造会議(福井市) CD・C・PR 紫牟田 伸子 AD・D 程 藜 PR 野村 充史

福井市は古くから繊維産業が栄え、それと連動して繊維を生産するために機械工業や化学工業も発展してきた。確かな技術力を有している伝統的な中小メーカーも多いが、生地や部品といった中間材を手がける企業がほとんどであり、近年はコスト競争力のあるアジアの企業に仕事を奪われていく。そんな状況を打開すべく、2000年、当時の福井市長の呼びかけによって発足したのが「地域産業創造会議」であった。「会議」がイニシアティブをとって地元メーカー各社と連携して福井発の商品を市場に送り出そうと動き出す。一般消費者から商品開発のアイデアを募集するコンペを開催し、地元メーカーが持つ技術とマッチするものを製品化したが、販路開拓で行き詰まる。商品カテゴリーがばらばらだから、地域活性としてのまとまりに欠け、商品も地域のイメージも広がらないままだったのである。

これらの課題をいかに解決して、新たなものづくりのプラットフォームをつくりあげることができるか。デザインディレクションをプロダクトデザイナーの酒井俊彦に依頼し、氏とともに提案したのが、「おいしいキッチン」プロジェクトである。ものづくりと流通を継続的に行うプラットフォームをつくること、異業種が参加してひとつのブランドをつくりあげること、その世界観を明確にしてコミュニケーションすることが提案の骨子であった。

レース、包丁、家具、高機能繊維、スプリングを扱う参加企業5社にそれぞれデザイナーをマッチングさせ、全体に「おいしい」という感覚をブランド構築の中核に据え、プロダクト自体もユーザーとのコミュニケーションを意識すると同時に、ブランドの世界観を体現するグラフィックデザインのアプローチにもそれを強く打ち出すことにした。

ロゴマーク
CL 地域産業創造会議(福井市) CD・C・PR 紫牟田 伸子 AD・D 程 藜 PR 野村 充史

ステーショナリー、名刺
CL 地域産業創造会議(福井市) CD・C・PR 紫牟田 伸子 AD・D 程 藜 PR 野村 充史

それゆえ、コミュニケーション機能を内包させたロゴマークは、その求心的存在ともなる。程藜のデザインは、おいしいものを食べた時の幸せな表情を口のマークで表現したもの。「キッチンやダイニングをデザインの力でおいしくする」というブランドの世界観をユーモラスに表現し、なおかつマーク自体が機能性を持つプロダクトとして自立したり、口のかたちがグラフィカルに変化したり、日常のものに表情を付け加えたりできるような展開可能性を多分に含んだものである。どのような使い方をしても、マークのかたちから自然に出てくる「おいしい」という感覚が広がっていく。

2005年5月に開催された第1回展示会に続き、さらに5社が加わった07年の第2回展示会では、「スイーツ」をグラフィックテーマに設定した。程はふんわりとした質感の白い紙を使ったクッキーのようなデザインのDMを会場のインスタレーションにも展開し、ブランドの世界観を柔らかに広げていった。

その後、地域産業創造会議は福井コンソーシアムブランド開発協議会となって「おいしいキッチン」ブランドを維持している。続いているからこその新たな課題にも直面している。

地域活性プロジェクトで大切なのは、単にものをデザインして終わるのではなく、ものと地域とユーザーとの新しい関係をつくり、それを維持してもらえることである。地域の人々が新しいことに参加する気持ちを醸成し、その雰囲気を継続的に持続させていくことが必要だ。そのためには複眼的かつ細やかなプランニングを行い、ゆるやかにまとめあげていくコミュニケーションデザインがつねに大事であろうと思う。


第1回展示DM


第1回展示会風景 Photo: Kenichi Morisaki


シール

紫牟田伸子(しむた・のぶこ)
日本デザインセンタープロデュース室チーフ・プロデューサー。1962年東京生まれ。美術出版社『デザインの現場』『BT/美術手帖』副編集長を経て、99年日本デザインセンター入社。福井市地域活性化プロジェクト「おいしいキッチン」プロジェクト、墨田区ものづくりコラボレーション「hanami プロジェクト」など、地域のものづくりや地域活性化プログラムの立案、ジャパンブランド事業、書籍やウェブサイトの編集、ワークショップおよび学習プログラム立案などに携わるほか、デザイン、アートの調査や執筆を行う。共著に『シビックプライド 都市のコミュニケーションをデザインする』『ワークショップ 偶然をデザインする技術』(ともに宣伝会議)など。