福井市は古くから繊維産業が栄え、それと連動して繊維を生産するために機械工業や化学工業も発展してきた。確かな技術力を有している伝統的な中小メーカーも多いが、生地や部品といった中間材を手がける企業がほとんどであり、近年はコスト競争力のあるアジアの企業に仕事を奪われていく。そんな状況を打開すべく、2000年、当時の福井市長の呼びかけによって発足したのが「地域産業創造会議」であった。「会議」がイニシアティブをとって地元メーカー各社と連携して福井発の商品を市場に送り出そうと動き出す。一般消費者から商品開発のアイデアを募集するコンペを開催し、地元メーカーが持つ技術とマッチするものを製品化したが、販路開拓で行き詰まる。商品カテゴリーがばらばらだから、地域活性としてのまとまりに欠け、商品も地域のイメージも広がらないままだったのである。
これらの課題をいかに解決して、新たなものづくりのプラットフォームをつくりあげることができるか。デザインディレクションをプロダクトデザイナーの酒井俊彦に依頼し、氏とともに提案したのが、「おいしいキッチン」プロジェクトである。ものづくりと流通を継続的に行うプラットフォームをつくること、異業種が参加してひとつのブランドをつくりあげること、その世界観を明確にしてコミュニケーションすることが提案の骨子であった。
レース、包丁、家具、高機能繊維、スプリングを扱う参加企業5社にそれぞれデザイナーをマッチングさせ、全体に「おいしい」という感覚をブランド構築の中核に据え、プロダクト自体もユーザーとのコミュニケーションを意識すると同時に、ブランドの世界観を体現するグラフィックデザインのアプローチにもそれを強く打ち出すことにした。







