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程NDCは中国でも有名で、憧れの人達のたくさんいるところでした。私は中国で美術の勉強をした後、広告会社で短い間仕事をしてから日本の大学に4年間留学しました。日本のプロの現場を見てみたいという気持ちがあったので、大学卒業後、普通に就職試験を受けたんです。その頃は日本語があまり上手じゃなかったので、とにかく作品を見てください、という感じで、あまりプレゼンができなかったんですけれども、入れたんです。最初は海外マーケティングの部署ですが、次にパッケージデザイン、今はトヨタの仕事をしています。
植松私は中途採用なんですが、以前の会社では一過性の広告やCM、新聞広告などが主で、また競合プレゼンが多くあまりかたちにならなかったんです。1週間夜中まで作業してわーっとつくって、休日にもみんなで案出しをして、夜明けにラフを壁に貼っていく。楽しかったし、若い人達ばっかりで、案も奇抜なものが出せたのですが、世に出て多くの人に見てもらいたいな、という気持ちがありました。NDCに来て感じたのは、着地した時の姿をよく考えるということ。クライアントや使う人にどのように受け取ってもらえるか。逆に言えば、変わったことがやりづらいとも感じました。今はできあがりの機能性を踏まえたうえで、新しい試みのあるものが理想だなと思います。
甲田私は、デザイナーとしての道を歩んでいく時に、本当に一からしっかり教えてくれるちゃんとしたデザイン会社に入りたいなと思っていました。NDCは有名で真面目な会社だと評判が高く、クライアントもしっかりしているので、基礎が学べるかなと思って志望したんです。資生堂かNDCかというくらい絞って受けました。入社してみて、クライアントに対しては自分のデザインを自由に表現すればいいというものではないけれども、大きいクライアントを相手にするからこそ身も引き締まるということもありますから。
程デザインセンターのクライアントはみな大きな企業で、売り上げも良い会社が相手です。パッケージデザイン研究所に最初に入った頃は、いろいろなことがやりたいわけです。例えば、ボトルのかたちがなぜこのかたちなのか、ボトルのかたちから提案したい、とか。今でこそ手に持ちやすいボトルとか、カバンの中に入れても場所を取らないようなかたちもできるようになりましたが、「学生みたいですね」とか言われながらも、いろいろつくって提案しました。先輩達もやる気を削がないように何も言わずにいろいろと提案させてくれました。今でこそ生産ラインを変えるには膨大なお金がかかるとか、リサイクルの問題とか、ビール1本のデザインでも、何十回でもプレゼンしなければならないこととかをよく理解していますけど、コンペで勝ってもダメになることもいっぱいありました。デザイナーとしてはおしゃれなものとかをやりたいけれどもなかなかそういう場合がなかったり、もっと文字は大きくとか、店頭でもっと目立ちたいという注文も多いから、最初はすごく怒ったりしていたんですね。でもやっていくうちに、クライアントの話にも理由はなくはないと思い始めた。特にビールや飲料の場合は大量消費財なので、実際には一番売り上げになる一番大きな投資だし、そういうのはデザインするのも、決めるのもすごく難しい。だからひとつのものの開発に対して大企業はすごく慎重になって、調査の調査の調査をする(笑)。デザイナーとしても責任を強く感じます。
大きい企業を相手にするとスケール感が違って、難しいですが、デザイナーはデザイナーの視点で求めるものがあるなかで、クライアントの目的である、商品を売る、ということに応えなければならない。デザイナーとしてのポリシーと、広告賞に出してもおかしくないものをつくって、それでさらに企業にも効果があり利益をもたらすものをデザインできたら最高だと思いますね。
植松そうですね。NDCで私も日々いろいろな部署の方にさまざまなことを教わっていると思います。以前、原デザイン研究所にいた時は、ロゴの仕事を多く担当させてもらいましたが、書体の特徴やディテールから感じられる効果、ロゴが展開された時に注意すべき点など、じっくりと勉強させてもらったように思います。ロゴというのは基本的にデザイナーは一時的にしか携わらないものですけれど、その会社の人は一生使うものですから責任は大きいです。原デザイン研究所でロゴのお仕事を担当するにあたっては、オリエンから参加させてもらっていました。いくつか仕事をするうちに、クライアントの目指している立ち位置や姿を想像し、文字のかたちプラスアルファのイメージ、ロゴの空気感や質感、存在感などを織り交ぜながらかたちづくっていくと、良いロゴになるかもしれないな、と思うようになりました。原さんは懐が広いので、原さんのイメージを共有した上で、自分から提案すればさらに膨らませていけたんです。
甲田自分がデザインの大きな軸として置いているのは、デザインの力で楽しませたり明るくさせたり、人にプラスの方向に働くようなことなんです。2008年度の朝日広告賞をいただいた作品は、赤塚不二夫の『これでいいのだ』という書籍を誰かに薦めるというもので、奇抜な格好をしている若者が我が道を突き進んでいるけれど、そういう生き方も「これでいいのだ」ということでくくって、すべて自分の道を受け入れていこうよ、という意味を込めて制作しました。道を歩いているごく一般の方に声をかけて、許可をとって撮影していきましたが、断られることがほとんどでした。でも、協力してくれた人達は、本当に自然な笑顔というか素が出ているというか、その素の部分をデザイナーとカメラマンで一緒につくりあげていくことができて、写真としておもしろいものが撮れました。できあがった作品を審査で見ていただいた時、「写真に力があるね」と言われたのがとても印象に残っています。その場所でその人としか出会えないというライブ感、二度と同じものはないもの……それが表現できて良かったと思っています。自分が楽しくつくっていると作品にも出てきますよね。
程・植松そうですよね。
程楽しさがすごく伝わってきます。コピーとビジュアルをひと目で覚えられますよね。そこが広告が狙う力だと思いました。同期の仲間とつくったということがすごく羨ましいですよ。同じ年齢、同じ経験のある同期でいろいろとやれるのはいいですよね。
甲田ぶつかってバトルもしますけど、それが経験になっていくんだなと思います。同期でいつも話し合っているのは、仕事だけやっていてもダメなんじゃないか、ということ。確かに忙しいけれど、100%自分の好きにできるところで評価してもらえると自分の自信にもなるので、どんどん世の中にアウトプットしていきたいよね、という話になります。
植松仲間でつくり、つくる過程も楽しかったということが、見る人にも伝わるパワーを感じさせるのだと思います。私も仕事以外に、自分の力だけでチャレンジしてみたいという気持ちから朝日広告賞に応募しました。これはMacを使っていません。スキャンもリスマチックに大判で出して、そのままはめ込んで終わりというものです。実はこの時、やらないと自分がだめになっちゃうんじゃないかという切迫した気持ちでやっていました。できあがっていく過程がすごくドキドキしましたし、終わった時にやり遂げた感がありました。汗臭い私、みたいな(笑)。その時にちょっと目の前の霧が晴れたみたいな気分があって、大きな仕事もやりながら、実験的なものにもチャレンジしていくというスタンスをとっていきたいと思っています。
程植松さんの鉛筆の作品を見ると、「尽在不言中」という中国の諺が浮かびます。「もはやすべては語らないこと」という意味です。
甲田デザインで浄化していく感じ、分かる気がします。
程私は、ひとつのモノをつくる時、それを変化させて次の展開までを考えるのが好き。これを使ってこんなことできるし、あんなこともしたい……とイメージが止めどなく膨らんでいくのが楽しい。「おいしいキッチン」プロジェクトのロゴマークは、自分の考え方が反映されたものになりました。自分自身の飛躍のきっかけになった仕事だと思います。口のマークは実にパッと出てきたので、アイデアから定着までほとんどかたちは変わりませんでした。マークを完成させながら、いろいろなことができる! と興奮してました(笑)。グラフィカルにかたちが変化したり、素材を変えて表情を付け加えたり、マーク自体がプロダクトになれるとかの新しいアイデア展開で、スケッチブック1冊がいっぱいになってしまいました。実現できていないものはまだまだたくさんあるんですけれども、これから徐々につくっていきたいと思っています。でも、マークは固定的なモノではないから、手から離れるときに大変かもしれないですけどね。
植松でもいろいろな人に使ってもらって、また新たな姿を発見できるのは楽しいですよね。
程私は「遊び心」のあるものが好きなんですね。「おいしいキッチン」展で、展示会の構成からグラフィックまで全部手がけた時には、バイヤーの方達を招待するDMから展示会のサイン、ディスプレイ、パーティ用のグッズまでデザインしました。私が思っているデザインは、実際に作品を見て終わるのではなくて、デザイナーと見る人が一緒に感じて楽しんで、一緒に何かを発見していくという共同作業であることです。人の感覚や行為を呼び起こすようなモノ、ハイタッチ的なモノというのかな、そういう可能性を私はいつも探している気がします。「キッズプロジェクト」のポスターはその一例です。
植松できあがったものから、さらなるコミュニケーションにつながるということですね。デザイナーとして私も目指したいところですね。
甲田とっても嬉しかったエピソードがあるんです。自分が担当したミキモトのDMで、そこに掲載されたバッグが予約殺到になったんです。自分のつくったもので人の心が動き、予約して買ってくれたという流れに感動を覚えました。華やかな仕事ばかりではなく、地道にいった仕事でも喜びがあって。快感がありますよね。私自身は、ひとりでこつこつ制作するアーティスト肌のデザイナーではないような気がしています。ロゴからショップから置くものから何から何までトータルで関わってやってみたいと思っています。お店と自分が直結しているというか、その後ろにいるお客様との距離が短いほうが私は好きなんです。広告というと何か遠いような気がします。私は近い距離のデザインが好きなんですよね。
植松私はわりと遠いデザインも好きです。ロゴをつくっていても、広告もサインもカタログも、どれも楽しくてどれも大変(笑)。同じ気持ちでできるんですけど、やっぱり反応をダイレクトに感じるとやる気が増します。原研究所でとても助けられたと思うのは、いつも周りの人に意見を聞けたこと。自分と同期に入った仲間が多く、とてもシビアで冷静な判断をくれる。原さんはいろいろな人に意見を聞くことを率先してやれと言ってくれましたし。迷ったら全員の意見を聞く、ということもよくやっていました。
甲田それはありますよね。ニュートラルな意見をくれるし。
植松どこの部署でもそうですが、みんな流されないし、デザイナーとして意識のある人ばっかりだから、意見がすごく参考になる。
程確かに。分からなかったら、何々チームの誰に聞けばいいとか、資料は誰が持っているとか、早いですよね(笑)。私は近いデザインと遠いデザインということはあまり感じないんですよ。やり方が違うだけじゃないかなと思うんですけれど、どうでしょう。あるとしたら、自分はどちらかというと遠いデザインを近くに、近いデザインをより近くにする感じかな、と思います。
程何でもやってみたいという気持ちです。ジャンルも問いません(笑)。最近、デザインがすごく面白いと思うのは、違う仕事をするたびに、自分でも新しいことに挑戦できること。挑戦することで勉強になったり、調べた知識が自分のものになったりします。最近、手帳のデザインをしていて、構造を解決するために新しい製本方法がないかと考えたり、手の込んだ高級なモノにするにはどうしたらいいかとか考えていて、日本の伝統的な技法を調べたり、知り合いのつてで染色の先生に聞いたり、染めの会社を訪問したりしています。コストの面から実現できるかどうかは分かりませんが、考えるプロセスでいろいろなことを調べたり、工房を訪ねたり、つくり方を研究したりすること自体が、自分の知識になるんですね。仕事をするたびに、いろいろな知識が増えていく。デザインってそういうところがすごく楽しいと思ったんです。
植松常に新しいことを学びますよね。そういう姿勢はデザインにも表れると思います。私は今、パッケージデザイン研究所にいるので、仕事の面で言うと、ものすごく売れるものをつくりたい(笑)。パッケージでも広告でも、自分の中に強烈に印象づけられているものがありますよね。最近、パッケージの本を見ていたら、小さい頃から今まで私の印象に残っているものは全部同じ人がつくったものだったということが分かったんです。そんなふうに、多くの人に手にとってもらえて、いいな、と思ってもらえるような仕事を自分の手でやってみたい。それが今の目標です。それとさっき実験的なことにも同時にチャレンジしていきたいという話をしましたが、そこで得たものも最終的に仕事に活かせるのが理想だな、と思います。
甲田私は、今は原さんのところで学びたいという思いがあって、自分の好きなものや好きなトーンはあまり出せないと思うんですよね。原研に入った以上は、とことん原さんの色に染まって(笑)、自分がどう成長していくのかということを、自分で楽しみにしている部分があるんです。若いうちにいろんな経験をして、その後に「自分色」を突き詰めていければと思っています!
程欲張りだけれども、大きい仕事も小さい仕事も、どんどんやりたいんですよね。
2009年9月28日






