10 SELECTED
BOOKS

Vol.16
中戸川 史明 写真の力を改めて教えてくれる本たち

Vol.16 中戸川 史明 写真の力を改めて教えてくれる本たち

1960年の日本デザインセンター創業時から社員に親しまれ続けている資料室。
その約2万冊の収蔵本の中から選んだ10冊をお勧めする
「ライブラリーのおすすめ本をシェアするプロジェクト」
第16回目は、中戸川 史明(画像制作部 フォトグラファー)が選んだ10冊です。

1
Eugene Atget
“The work of Atget volume1” “The work of Atget volume3”

正直に言うとAtgetの写真がというよりはその写真思想に深く共感します。40歳を超えて写真を撮りはじめ、30年で8,000枚もの写真を残したという事実が物語るようにAtgetは心底写真の現実再現能力を信憑していて、記録する事に執着し、決してその領域から出る事をしなかった。

2
Michel Frizo 他
“Cross Over: Fotografie der Wissenschaft + Wissenschaft der Fotografie”

スイスのWinterthur 写真美術館で行われた「Cross Over展」のカタログ。学術的に意義を持つ科学写真が芸術の分野においてでも十分に機能する事を提示するとともに今後科学を写真でビジュアライズすることへの問題提起もしています。被写体と写真として表現されたものが同一である事が最も重要視されると、こんなに写真が強くなるのかと改めて教えられた本です。

3
Alec Soth
“Songbook”

現在最も影響力のある写真家の一人Alec Sothの新しい写真集です。自国アメリカにこだわりドキュメンタリースタイルをモダン的に発展させ、何か大きなものが荒廃していくような危うい現在のアメリカを周到かつとても力強く骨太に表現しています。

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4
Herman de Vries & Susanne de Vries
“Die wiese・the meadow eschenau 1986-2013”

自らを自然の代弁者と称するオランダのアーティストHerman de Vriesの作品集です。彼は写真家ではないがこの作品集の写真達はとても強くて雄弁です。僕らの住む日本とは微妙に生態系は違うのだろうけど人間が持つ普遍的な原風景としてこういう景色を見るととても感動します。

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5
Eadweard Muybridge
“Animals in motion”

写真史を語る上で重要な写真です。元々は馬主からの依頼仕事ではあったが科学的な立場から撮られたこれらの写真群によって、それまで曖昧にとらえられていた様々な動物行動に確かな価値が加えられました。写真の力が最も強かった時代の印象的な出来事。ギャロップのシークエンスチャートは純粋にかっこいいと思います。

6
Andreas Feininger
“The world through my eyes”

Andreas Feiningerという写真家の作品集です。超望遠レンズで撮られたNew Yorkの写真がとても印象的です。NYの膨大な質量と大多数の人生をたったの一枚に集約してしまうその暴力性は、その技法も意味合いも大いに異なるが、報道写真家George Rogerが撮影したユダヤ人強制収容所の写真と通底する所があるように思います。

7
William Eggleston
“Los Alamos revisited”

Egglestonの写真はとても純度が高いです。きっと彼は全身を目玉にして歩き回り、世界中を感覚的に写真へと変換しているのだと思います。造形や事象にだけレンズを向けるのではなく、ただストレートに色彩を撮っているようなそんな印象を受ける写真が特に好きです。

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8
ホンマ タカシ
『東京郊外 Tokyo suburbia』

あえて写真を完成させない感じ、隙を作ってそこに写真的エッセンスを呼び込むような…そんな微妙なバランス感覚に共感します。自身の作品の元ネタなどもオープンにしているのでそれらと見比べたりするのも楽しい写真の見方です。近年の活動も自分の有名性を利用したような作品発表だったり、ポストモダン的な写真表現の啓蒙活動は誰にでも出来る事ではないと思います。

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9
Harry Callahan
“Callahan”

様々な技法で写真を制作したHarry Callahan。中でも一番好きなのはミニマルな写真シリーズ。 圧倒的な美意識です。写真表現は絵画と違いどんなにいろんなものを削ぎ落としても決して具象からは逃れられないという事を学びました。

10
Robert Adams
“What we bought: the new world”

ニュートポグラフィックスという括りで語られることの多い"Robert Adams"ですが僕は他の作家達とは少し違った印象を受けます。もう少しユルイというかザラッとしているというか… 今まで発表している仕事量も膨大で今後、追って行きたい作家の一人です。写真史的な解釈とは少し違った角度から見るのもとても面白いです。

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