10 SELECTED
BOOKS

Vol.15
赤星 薫 言葉を楽しむ絵本

Vol.15 赤星 薫 言葉を楽しむ絵本

1960年の日本デザインセンター創業時から社員に親しまれ続けている資料室。
その約2万冊の収蔵本の中から選んだ10冊をお勧めする
「ライブラリーのおすすめ本をシェアするプロジェクト」
第15回目は、赤星 薫(第4制作室 チーフコピーライター)が選んだ10冊です。

1
谷川俊太郎
『絵本』

54年ぶりに復刻されたという、自費出版の写真詩集。若き谷川さん自身が撮影したという20の写真と17の詩が濃密に絡み合う、官能的な「絵本」である。いろんな手が被写体となっている写真のせいか、どの詩も読むというより、触っている感じがする。あるいは触られているような。

2
樋勝朋巳
『きょうはマラカスのひ』

なぜマラカス? なぜみんなタイツ姿? そもそもクネクネさんだけなぜイヌ!? つっこみどころ満載の不条理ワールドを、独特のゆるい空気がつつみこむ。おっとりとした雰囲気ながら、どこかカフカの『変身』を思わせるシュールさである。この際、意味や理屈なんて忘れて、チャッ ウー チャチャ ウー カンカンカンカン!パー!とマラカスの日を楽しみたい。

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3
ヨシタケシンスケ
『りんごかもしれない』

忘れていたかもしれない。世界のすべてが「かもしれない」でできていた頃のことを。絵本のなかで、ぼくは、りんご1つで47の「かもしれない」を妄想する。「りんごにはきょうだいがいるのかもしれない。たとえばらんご、るんご、れんご……」すごいセンスだ。これは世界一おもしろい哲学書かもしれない…

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4
ヨシタケシンスケ
『ぼくのニセモノをつくるには』

同じ著者の『りんごかもしれない』のテーマが他者なら、こちらは自己。「自分を知ること」がテーマなのだが、「自分探し」ということばにまとわりつく胡散臭さや、説教めいた絵本たちを軒並みぶっ飛ばすおもしろさ!そして奥が深い。子ども(特に小学生男子)に絶大な人気を誇るというのもうなずけます。

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5
穂村弘
『絶叫委員会』

ふいに、いつもの世界がゆがむような感覚が、絵本『おしいれのぼうけん』を彷彿とさせることばの本。以前NDCで講演をしてくださった穂村さんは、「社会では無意味で無益で無駄なこと。そこに、世界への扉がある」とおっしゃっていました。この本には穂村さんが採集した“社会”のことばと、“世界”のことばが詰まっています。個人的には、世界への扉を開けたくてたまらなくなります。

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6
がんも大二
『パトさん』

なんだろう。ひとりだったパトさんがうさぎと出会い、結婚し、子どもが生まれ、孫が生まれ、静かに生きてゆく。ただそれだけといえばそれだけなのに、泣ける。「たべる」「けんかをする」「ふえる」「みまもる」など、27の動詞のみで構成している点も秀逸。絵本にありがちな感傷や装飾を注意深く排除したからこそ、だいじなものだけが、ここにある。

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7
石川九楊 編
『書の宇宙1 天への問いかけ・甲骨文・金文』

亀甲や獣骨に刻された甲骨文字と、青銅器に刻された金文。そのプリミティブな美しさに惹かれて、学生時代に臨書しましたが、これがとんでもなく難しい。いまでも未練がましく眺めては、こっそりほれぼれしています。神さまとの対話から生まれたという文字に、仕事でも触れられる幸福を思い出させてくれる本。

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8
林大林
『はやくちまちしょうてんがい はやくちはやあるきたいかい』

はやくちことばをいいながら はやくちまちしょうてんがいを はやあるききょうそうする──冒頭だけで舌がもつれそうですが、これは音読すべき絵本。回文の名手でもあった土屋耕一さんによると、早口言葉とは「早く滑らかにしゃべることが不可能なように仕組まれている言葉の遊び」であり、「舌の体操」でもあるとのこと。たしかに一冊で、舌がへとへとです。子どもに読んであげる際は、ぜひ事前に準備体操を。

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9
レイモンド・ブリッグズ
『さむがりやのサンタ』

「やれやれまたクリマスマスか!」「ふゆはいやだよまったく!」 世間のイメージを覆し、ぶつぶつ文句を言いまくるサンタクロース。小学生のときに読んで、最も嘘がないと感じたサンタクロースが、この寒がりやで酒好きのおじいさんだった。登場する文章は、ほぼ彼の愚痴とぼやきのみ。それでも愛を感じるのは、彼のモデルになったのが、牛乳配達人だった著者の父親だからかもしれない。

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10
一倉宏
『ことばになりたい』

絵はないけれど、絵が浮かんでくるようなことばの本。コピーライターになる前に収録作品のいくつかを読み、「広告のコピーってこんなに自由なんだ!」と衝撃を受けたことを思い出します。コピーはもっと、ほんとうのことを言ってもいい。一倉さんのことばを、わたしはいまも信じています。

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